サラダボウル

分かりあえなかった、から。私は、今日もサラダボウル、抱えて。
コーヒーを飲むの。どびっきり苦いのを。
別れてしまったひとたちをつなぎとめたいから、今日もいつものように、過ごす。



銀色のバー、何度もみがくけど、雨はやまない。
正しくはないけれど、大切なこと、かき消されそうになっても、
ただ雲の上、少し見つめるだけで、なぜかこころ救われる。



くらやみの中で入り混じる赤や青の光が、苦しみを運んでも
その中で生きていく気持ち、忘れずにいられるだろうか。
桜の枝から落ちる光の粒を浴びて生きていたいと、どこかで思うのに
電車は気付けば郊外を通り抜けて、見えないトンネルにぶつかってゆく。



抜け出せない、
終わらない、
空白はいつでもあなたを待っている。



ブラックコーヒー、ひとつちょうだい。
顔は笑顔のまま。
サラダボウルもきっとどこかで、あなたを待っている。



あー、こんなわたしにはやっぱり、かくご、足りない。
自分には向かないギンガムチェックの赤白を
冷静に見ているだけの力強さはない。
楽しい化学反応、目の前に差し出されたら
一番最初に踊り出して、一番最初に疲れ果ててしまうのは、
変わらないりんご、見ているときと変わらない。
何にも変わらない。
ずっと変わらない。
あきれるほど変わらない。
飽きることもない。