トンネルの向こうで



雪は目の前を通り過ぎ、地面に落ちてゆく。
私に触れることなどなく、ただ落ちてゆく。



たくさんの落ちてゆくものたちの世界の中で、
太陽や月、そして、幾許かの動物たちは、山を昇ってゆく。
見えないようで見えるちからは、強く、私の背中を押している。



そんなちからと、今ここで雪をつかまえようとしている手と、
どちらが私かと問われたら。










足の周りを通り過ぎてゆく風の冷たさが
私の心に何かを語りかけているという事実だけが
私の実感。