プールサイド小景

温泉でぷかぷかしながら、この本を読んで、シチュエーションは間違った、と思ったけれど、わりと私の好みの小説でした。何となく、時間と筆が見える。



結局、私(たち)はきっと、こういうものを見たがるし、こういうものが好き。本当に自分勝手だけれど(だって相手には大変な状況を強いるわけだから)。そういう意味では、芸術というものには簡単に近づけないし、やはり今の私には到底無理な世界だなぁ.....。



ちなみに、この本を読んだきっかけは、村上春樹さんのタイランドという短編小説。その中に書かれた謎のことがとにかく知りたくて、そのタイランドのヒントとなった静物という小説が入っている短編集を手に取ったのです。



ただ.....核心は決して書かれないところが、静物タイランドは一緒です、ということがわかっただけで、結局謎ときはできなかったわけですが。それでも、また好きな小説に出会えたのだから、まぁ、良かったのかな、と思います。



タイランドに関しては、来年ちゃんと向き合おう、って思っていたけれど、気付けば自分で引き寄せてしまっていて、目の前にどかんと置かれてしまった。でも、結果論として、今の状況は向き合うにはぴったりで、それは、幸せから一歩遠ざかることではあるのだけれど、おそらくそれが何かへの近道なのだ、と少し気付いてみたりもした。



どの時点で人生折り返すか、というのは人によって違うし、私は同世代の中で言えば遅かったと思うし、私のまわりの人と比べて相当遅かったと思う。ずっとわがままだけで生きてきたし、そういうことを考えるのをどこかで避けてきたと思うし。だから、それが許せない人はたくさんいたと思う。ごめんなさい。そのときにちょうどタイランドを読んで、もう逃げられないのだな、と思った。そして、かつ、その上折り返し方間違って今に至るけど、まだ、うまく理解できていない感じはある。とか言ってしまうのも、だめですね。まったくもって。



何年か前に、四月の思い出、って書いて、また、同じところに振り出しに戻ってきたなぁと思う。というのはきっと間違いで、ぐるぐると繰り返しているわけではなく、確実にある方向に向かっている。というか、そうでなければいけない。



すべては消える。春の思い出さえも。



The fire will dwindle into glowing ashes
for flames and love live such a little while
I won't forget, but I won't be lonely
I'll remember April, and I'll smile.