暖炉からは胡桃の香ばしさ、空からはソリで駆ける音。
一輪の花が咲いている。
ポインセチアの赤に隠れて、ひっそりと。
白い壁を明るくする蛍光灯は、相変らず眩しい。
赤と白のコントラストは
私の心の中で桃色になることなどなく
まるでそこに鉄板でも挟まっているかのように
くっきりと輪郭を保ったまま
そこらに散らばっているにお祝い的な印象を
せっせとかき集めて
私の心の中を華やがせようとする。
私は、いつからこの色の組合せがお祝い的であると
思うようになったのだろう。
仕組まれた共感覚。
それはまるで、オクターブをオクターブと思うように
なったように、あまりにもナチュラルな出来事で
私はそれに気付くことなどなかったのだろう。
別にそれがいいとか悪いとかそんなことはなくて
ただ、そうである、ということ。
そして、私という存在も、誰かという存在も、
ただ、そうである、のだろう。
それを表す言葉もなく。
ポインセチアの赤に隠れて、ただ、ひっそりと。