空気



空気は吸っても空気で、吐いても空気。
空気は水にはならないし、空気は魂にもならない。





ひとかけらのチョコレートを与えても
空気は喜ばないし、食べようともしない。
なのに、私たちは、頭の中で妄想する。
空気だって実は喜んでくれているかもしれない、とか。





勿論、そんなわけはない。





空気に頬を押し当てて、空気に肌をさらしてみれば、
空気は私の水分を奪ってカラカラにしてしまう。
ことだってある。
私たちは往々にして、それに気付かなかったりもするけれど。





空気なんて、と誰かは言うけれど、
確かに空気はそんなに重くもないけれど、
つかんでもつかみきれぬ、その軽やかさは
時に私たちを持ち上げようとし、
時に私たちをどこかに追いやってしまう。





そんなふうに空気に翻弄されるがまま、
私は1年前から相変らず、
ただ、外の景色を眺めている。





何を考えることもなく。
どこへ行くこともなく。





一筋の光を曇らせる
空気に立ち向かうこともなく。