青いバラ

ティッシュのハコから、もやっと白い煙が出ている。
その煙は鏡にはうつらない。けれど、
わたしはそれを手にとってそっとくちびるに寄せる。
目を閉じれば、青い海辺のきらきらとした波や、砂浜の色と粒とが目の前に浮かび、
ざらっとした海水や砂は、更に奥の記憶につながるロープになる。



ロープはどこまでも続いて、わたしはたどることができない。
もしたどるのなら、わたしはわたしの続きをあきらめなければならない。
そうして、たどる一寸手前で躊躇しながらも、
いつかたどりつきたいと思う。
私ではない、何か、に。



青いバラの葉を手のひらで包むと、煙はふわりと飛び立ってゆく。
いつのまに眠りについたその夜の月は、どこまでも遠い。